「歴史は、現代と関連付けて理解することで初めて生きた知になる」
池上さんのこの一節に興味がわき買って読んでみました。
佐藤優さんとの会話形式で世界での大きなトピックについて2人の考察が書かれています。
感想としては、二人の会話内容に対する歴史の理解レベルがとても高いので話しに追いつくだけで精一杯、という感じでした。散発的な知識としてはキャッチアップできたけど、きちんと理解するのであれば改めて勉強は必要だなと感じました。
対話形式よりも、図や年表を使って(特に中東)説明したほうが読者にとっては理解しやすいのではないかなと個人的には思いました。
本の後半には教育論が書かれていて、それが個人的には一番面白かったです。
佐藤さんのビリギャルに対する肯定的ではない意見(元々中学試験をしていて机に向かって集中できる、私立校の学費が出せる程度に親の資金があること、試験科目が小論文と英語のみだったから)はあるものの私はその人が頑張ったというプロセスだけは評価して欲しいなあと思います。
ただ、本のタイトルはキャッチーなものなので、これら前提が省かれていると読者の人が突っ込みたくなるのも理解できます。
あと池上さんのリベラルアーツに対する考え方は賛成です。
リベラルアーツとは
→文系、理系の区別なく幅広い知識を得た後に、専門性を深めることで、豊富な知識に裏打ちされた創造的な発想を可能とする教育です。 専門分野を決めるのは2年次終わり。 それまでは、自分の志望や興味に合わせて、関連のある様々な分野を幅広く学ぶことができる
大学生に限らず、社会人になっても多様な知識や考え方を学ぶことは必要だと思います。
<本の目次&メモ>
1.なぜ、いま大世界史か
2.中東こそ大転換の震源地
・中東は地政学的にユーラシア大陸のど真ん中に位置しているし、宗教的に見ても、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地もある
・中東が混乱すれば、その影響は世界に波及する
・中東の4大勢力
1.サウジアラビア、湾岸諸国、ヨルダンなど、アラビア語を使うスンニ派のアラブ諸国
2.ペルシャ語を話すシーア派のイラン
3.アラビア語を話すシーア派のアラブ人
4.スンニ派だが、トルコ語を話し、民族意識も高いトルコ
・シーア派
ムハンマドの没後、ムハンマドの娘ファーティマの夫で正統カリフだったアリーの子孫のみをその後継者として認めるイスラム教の宗派。現在、イスラム教と全体の信者の10%がこの宗派に属している。シーア派は「アリーの党派」という意味
・スンニ派
スンナ派というのは、アリーの子孫だけでなく、歴代のカリフを正当とみなす宗派です。現在イスラム教徒の90%が信徒。スンニというのは、「ムハンマドの言行に従う者」という意味
3.オスマン帝国の逆襲
・トルコのエルドアン大統領はオスマン帝国の復活を目指している
・言論弾圧も激しい
・クルド人 独自の国家を持たない世界最大の民族
・南シナ海に赤い舌を伸ばす中国
5.ドイツ帝国の復活が問題だ
・ギリシャは沖縄と似ている?
→工業、つまり第二次産業がなくて、一次産業と第三次産業と基地があるという構造
・ドイツの生産性は、日本より遥かに高い
・ドイツ人は、とても合理的に物事を考える。
6.アメリカVSロシアの地政学
・ウクライナのフィンランド化
→ソ連との関係では独立は認められるものの、有事の際にはソ連に協力
・アメリカは王朝のようなもののはないものの、ブッシュ家、クリントン家、ケネディ家の影響が強い
7.「右」も「左」も沖縄を知らない
・米軍基地問題について
日米安保に反対なのか?と質問を受けた翁長知事は
「あなたは自宅の近くに米軍基地ができるとしたら、受け入れますか」と逆に質問すると大抵の人は首を横に振る。それから
「あなたは、日米安保に反対なのですか?」と質問するようにしているとのこと
8.「イスラム国」が核をもつ日
9.ウェストファリア条約から始まる
10.ビリギャルの世界史的意義
・識字を変えることで過去の歴史を断絶することができる
・中国共産党による簡体字の変更の本質は歴史を断絶し情報統制すること
ソ連や日本も行っていた
11.最強の世界史勉強法