歴史が好きになって、今まで歴史関連の本をたくさん読んできました。
だんだんと自分の持っている歴史知識と考察が深まってきている感覚があります。
でも、知れば知るほど出口さんの歴史考察の深さの凄さを痛感します。
本書には歴史の王道とはちょっと外れた中南米やインド、アフリカの歴史が書かれています。
特に中南米は南アメリカ解放の英雄、シモン・ボリバルやサン・マルティンのイデオロギーは考え深かったです。
南アメリカの歴史で重要なことは下記4点です。
・コロン交換により先住民がほとんど死滅してしまったこと
・スペイン人を中心としたヨーロッパ人が南アメリカ大陸を第二の祖国としてきたこと
・フランス革命とナポレオンの影響が新大陸にも及び、広範に独立運動が展開され、劇的なヒーローが多数登場したこと
・自由主義・リベラル派と既得権を引き継いだ保守派との争いがあったこと
これらから私が思うのは、新体制で共同体なり国家を形成するには理想主義と現実主義、この2つの考え方のどちらかに人間は寄るようです。
前者はあるべき姿を追求する。後者は現実から目をそらさず現時点のリソースをもとに体制を組んでいく。
本当は両方のバランスがうまく取れているのがいいのかもしれないですが、理想主義は妥協を許さないことが多いので、極端な考えに固執しやすいのかな?とも思いました。
歴史的には現実主義に則った体制を敷いている国が長く続いているように見受けられます。
また、新体制において重要なのは中間層がどれだけ整っているかが安定した運用の要だそうです。
アフリカの一部の国では、やはり中間層の経済や成熟度が育っていないことが内戦の一因とも考えられています。
この考え方は現代の会社経営でいえば、ミドル層がどれだけ優秀かで会社が掲げる理想を実現できるかどうかを推し図ることができるかもしれないですね。
あと、本書を読んで面白かったのは鉄の宰相と言われたビスマルクの戦略的思考や彼の振る舞いです。エピソードとしてヴィルヘルム1世がビスマルクを
「ビスマルクのもとで皇帝であることは困難である」
と評したのは、ビスマルクの人柄を表現せしめたものだと思います。
逆に言えばヴィルヘルム1世の包容力があったこそ、ビスマルクが考える戦略を遂行することができたと考えることができます。
歴史事実は1つだけれども、時間軸や地域軸の捉え方。そして、ビジネスや政治観点などによって全然見え方が代わってくるのが面白いですね。
おすすめです。