カエサルが台頭してきたにつれて、元老院がカエサルを警戒し政治的排除を試みるものの、カエサルやポンペイウス、クラッススと共に三頭政治の密約を交わして対処します。
この辺りの政治的な駆け引きが、まさに塩野七生さんの凄いところというか、とても読んでいておもしろいです。
キケロはときにカエサルと敵対して様々な企てをしたり、ときにはキケロの弟がカエサルの下で厚手の待遇を受けていることの感謝を伝えるあたりが、なんというかとても人間的に感じました。
本書を読んでカエサルという人間としての器の大きさを感じずにはいられません。
塩野七生さんの図解も記載されていましたが、カエサルは虚栄心もありつつも、それよりも野望がとても大きい。
スッラ、ポンペイウス、クラッススなど他の人物はカエサルには大きさも及ばなければ、むしろ虚栄心の方が大きかったのではないか?
というのが著者の主張です。
また、本書ではカエサルがガリア地方で様々な部族と争ったり、和平を結んだりとガリア地方の平定に尽力しているのがわかりました。
部族の平定というと現代では想像力が及ばないところではあるのですが、おそらく言葉も文化も異なる部族と交渉したり、講和を結ぶことは至難だったと思います。
ガリア地方を平定しないと、イタリア地方に食糧をもとめて部族達が押し寄せてくるという切実な課題もあったからなんですね。
本書ではカエサルは無益な殺生を好まないことが書かれている一方、一旦、結んだ講和を勝手に破棄したりする部族に対しては容赦のないことも書かれていました。
カエサルはガリア地方の平定をしながらも、元老院たちがいるローマでの政治的な動きも察知して自分にとって不利な状況に追い込まれないよう、密約や自分が信頼する者に手足となって動いてもらったりしています。
カエサルの野心というのが明確になるにつれて、主に元老院ですが、カエサルの一挙手一投足に反応しては対応を考える。
その様子はまさにカエサルが段々と主導権を握り始めた証拠であるように感じました。
私はカエサルの活躍はまさにガリア地方の平定という偉業を成し遂げながらも、カエサルの台頭を良しとしない人たちが出てくることに、なんというか今にも通じるものがあるように思います。
カエサルの対処方法はこの9巻では軍事にお物を言わせるようなやり方ではなかった。
むしろ、ローマの繁栄を願っての平和的な行動を軸としていたように思います。
とはいえ、軍務に集中している間、政治的なポジションを奪われないよう手を打っているあたり、とても機転の利く人だったと考えます。
歴史家の名前は忘れましたが、カエサルという人間はどの時代に生まれたとしても大成を成しただろうというのは、カエサルの様々な能力の凄さを物語っていると思います。
本書は40を過ぎてカエサルが陽のあたる王道を歩み始めた一冊だと思います。
オススメです。