アウグストゥスの統治中後半戦です。
アウグストゥスは軍事再編成をして大戦力の3分の2を削減したり、税制改革や行政改革をどんどん行います。
統治に関する記述が大変を占める本冊ですが、私はとても面白かったです。
例えば、税制改革ではローマ時代から直接税と間接税があることが新鮮でした。現代の税制も昔の延長線であると認識しました。
防衛に関していえば、塩野さんの下記意見は昨今のウクライナ情勢からも考えさせられます。
金を払って他人に安全を保障してもらうという生き方は人間を堕落させると、ローマ人だけでなくギリシア人も思っていたのが古代である。
また、非常に共感したのが本書記載のイタリアのある教科書には指導者の資質について次のことが書かれているそうです。
指導者に求められる資質としては次の5つである。
知性・説得力・肉体上の耐久力・自己制御の能力・持続する意思。カエサルだけがすべてを持っていた。
塩野さんは知性について、次のように述べています。
知性とは、知識だけではなく教養だけでもなく、多くの人が見たいと欲する現実しかみない中で見たくない現実も見すえる才能であると思うが、見すえるだけでは満点ではない。見通した後で、それがどの方向に向かうのが最善の道であるかも理解してこそ、真の知性と呼べる
私も勉強して得た知識だけでは知性は獲得できるとは思っていません。
次の方向性を正しく見通せる人が知性ある人、というのはとても納得です。
また、指導者は自分の考えを周りに納得してもらうために”説得力”が必要となります。
特に次の方向性が新規である場合は、いろんな人から抵抗があるかもしれません。
それでも次の方向性に向かうために粘り強く説得をする力は求められるかもしれないですね。
アウグストゥスが表面上ではローマ共和制を謳いながらも、水面下では長い時間をかけて、ゆっくりではあるが着時にローマ帝政国家を築き上げる様は並々ならぬ強い意思を感じます。
<参考:アウグストゥス名言>
・わたしのことを悪く言う人がいても憤慨してはいけない。
・満足しようではないか、彼らがわれわれに剣を向けないというだけでも。