「ここを渡れば人間世界の破滅、渡らなければ私の破滅。神々の待つところ、我々を侮辱した敵の待つところへ進もう、賽は投げられた」
を言うに至った背景を本書で知ることができます。
非常に物語がダイナミックというか、ローマという国家が大きく揺れ動くに至ったカエサルの決断には、本人自身も大きな苦悩があったのではないでしょうか。
ただ、カエサル自身は確かに元老院から国賊とみなされることに対して名誉は傷つきもしただろうけど、このルビコン川を渡るときに言ったセリフは決して私怨からではない。
むしろ、元老院の権力が大きくなっていることに対する現体制が、ローマ繁栄という観点では大きな危機感があったからこその決断だと思います。
元老院には統治能力はないと見なしていたカエサルは革新派でした。
革新派は保守派からすると、目の上のたんこぶでしかないので排除しないと自分たちの存在を脅かされ続けるように錯覚してしまうのは今の時代も同じかもしれません。
話は戻って本書で面白かったアレシアの戦いです。これによりガリア征服が決定的になった戦いでした。
敵将のウェルキンゲトリクスはカリスマ性を持った人だったみたいです。ガリア人にローマ支配に対する抵抗を各部族に説得し、まとめ上げることができた稀有な人だったようです。
実際の戦いは包囲網の構築が要だったのですが、ローマ工兵の技術力が勝敗を分けたように思います。そして、カエサルの臨機応変な対応。
ローマ軍は本当強いですよね。本書だけではなく動画でアレシアの戦いを観るとより一層理解が深まると思います。
いい動画があったので紹介します↓
あと、ガリア征服後の元老院との政治的な戦いから内戦に進んでいくにあたって、ガリア戦争で活躍したカエサルが信頼する指揮官である、ラビエヌスが元老院派となったポンペイウスの説得によってカエサルのもとを離れるのも、なんというか人間的なドラマのように感じました。
ただ、ラビエヌスは単騎で元老院派に加わったのと、カエサルもラビエヌスがガリアに残した荷をラビエヌスに送り届けたりと、表面的には対立関係であっても、深層的には信頼できる関係性だった思います。
10巻はガリア戦争から元老院との戦いに移行していく、とても面白い巻でした。
オススメです。
今年も読書ライフを楽しんでいきたいと思います。