本書はチェスと太極拳を極めた著者の習得方法が体験的に記載されています。
成功する一握りの人々は、ぐらつくことなく行くべき道を進んでいるが、そうでない人々の多くは脇道に逸れては頓挫してばかりだ。
諦めず真っ直ぐに愚直に習得しようとしても、なかなか成果が出ないときがあります。
この本には著者なりの習得技術が紹介されています。
まず、著者は習得者のマインドが実体理論↓になっていないか注意換気しています。
実体理論・・・能力を固定的に考えること。自分はこれが得意だ、これが得意ではないなど、生まれた特質で能力が決まっているかのような考え方。
増大理論・・・能力は努力次第で増えると考えること。頑張ったからうまくいった、頑張りが少なかったから上手くいかなかったなど、努力によって結果が変わるという考え方。
注意すべきはプロセスを重視すること=増大理論というわけではありません。
プロセスこそが何よりも大切だという考えを持ったことがきっかけで、全身全霊を賭けて本番に挑もうとしない態度が芽生えてしまったり、または、結果や成績をまるで気にしていないと振る舞うようになってしまったりする。
レイティング・ポイントばかりを気にして、いつも次の試合結果によって自分の全米ランキングがどう変動するか計算していた。そういう目前の実利を重んじる気質のプレーヤーは、僕が得意とする混沌とした嵐のような局面を前にすると不安に襲われてしまう。
この考えは子供の教育においても、十分参考になると思います。
読んでいて、4つほど気になったポイントを記載します。
①:負の投資(勝敗よりも技を習得することをトッププライオリティに置く)をする
私の趣味であるフットサルを例に取ると、逆足で新しいドリブル技術を試合で試してみます。
最初は慣れていないぶん、失敗が多く試合に負けることも多いです。
けど、実践で試すことで得られる経験値を優先しているので、ドリブルの失敗は気にしないようにします。
何度もあきらめずに技を試すことで、段々とドリブルの成功確率が高まり、試合の勝敗を左右するオプションを獲得することができます。
負の投資は意図的に、積極的にすることが求められます。
②:逆行をあえてトレーニングの糧にする
先ほども紹介した、怪我をしても練習をして、より自分の動きを高めていくという方法も「逆境をアドバンテージにする」方法です。逆境は自分の学習プロセスに新しい視点をもたらすものとして、活用していくことが大事なのです。
頂点を目指すのであれば、他の人なら回避するようなリスクも背負い、その瞬間にしか学べないことを最大限に利用して、逆境をアドバンテージに変えなければならない。
著者は太極拳の試合で片腕を負傷してしまったものの、片腕でどう相手に打ち勝つか訓練することで、得られる技術があったそうです。
メンタルも鍛えることができるので、逆行は積極的にトレーニングの糧にすることが必要です。
③:チャンキング(直感的判断、無意識の思考、行動)
直感的判断、無意識の思考、行動について、著者は「チャンキング」という概念を使って説明します。
チャンキングというのは、たとえばチェスや太極拳における特定の攻防のパターンや勝つための定石のようなものを、一つの情報のまとまり(チャンク)として統合したものです。
同じ動作を徹底的に繰り返して訓練することで、その動作を無意識にできるようになっておき、特定の場面になったら自動的にその動作が出るように訓練します。これはつまり、複数の動作や判断を一つのまとまり(チャンク)としてまとめている=チャンキングしているということなのです。
より抽象的なレベルにチャンキングしていると、複雑な局面でも直感的に判断し、即最適な行動をとることができるそうです。
④:ストレス・アンド・リカバリー
ゾーン状態にもっていくためには、短時間でリカバリーできるようにすることが必要です。
試合中は、短時間で体力、精神力を回復できなければなりません。
そのためのトレーニング法に「ストレス・アンド・リカバリー」があります。
これはギリギリまで動いて、一定の時間休むことを1つのセットにし、それを何度も繰り返すというものです。
たとえば、5分間走り、1分休み、また5分走り、、ということを繰り返す。こうしたトレーニングをすることで心身の回復スピードを高めることができます。
このトレーニングを繰り返すことで、集中した活動とリラックスの間を自由に行き来できるようになります。
本書では「ゾーン」の体験談が何度も出てきます。
ゾーンに入るためには厳しい訓練が必要ですが、ゾーンとまでは言わなくても、緊張しない高い集中状態に入ることは、訓練次第でできるようになるそうです。
まとめ
本書を読んで、ゾーンに入るためには休憩が必要なことがわかりました。
自分なりのゾーンに入る方法を獲得しておきたいです。