戦争論は抽象と具体をいったりきたりする論法なので読むのが難解ですが、そのぶん読み応えがある内容でした。
戦争論はクラウゼヴィッツが亡くなった後に刊行されましたが、妻のマリー・フォン・ブリュールが刊行に大きく貢献。冒頭、彼女の言葉がとても印象的でした。
「わたくしは21年もの長い年月を夫に手を執られてこの上もなく幸せでした。このような夫を失うという何ものに換えがたい損失にも拘わらず、わたくしの心のうちに積まれたさまざまな追憶と希望という無価の財宝、また個人の余徳によってわたくしに与えられた友情との豊かな遺産、更にまた夫の稀みる高い価値がこれほどの名誉をもって遍く認められているという心温まる感情に恵まれたわたくしを、只今でも非常に幸福と存じております。」
彼女にこの上ない気高さを感じました。きっとクラウゼヴィッツも天国で感謝していることでしょう。
クラウゼヴィッツの戦争理論はまずは「戦争とは何か?」と戦争の定義から始まっています。
「戦争とは、敵を強制してわれわれの意志を遂行させるために用いられる暴力行為である」
これがクラウゼヴィッツの見解で、戦争には次の3つが作用すると述べています。
・敵に敵対的感情を抱く相互作用
・敵の戦闘力を粉砕しようとする相互作用
・敵の戦闘力に応じた我の戦闘力を準備しようとする相互作用
確かにこの3つが作用するとすれば、戦争は極大化するため、凄惨な結果を残すのは必然だと思いました。
なお、クラウゼヴィッツの戦争論の内容は8篇から構成されています。
- 第1篇「戦争の本質について」 - 戦争の本性、理論の戦争と現実の戦争の相違、戦争の目的と手段などを論じる
- 第2編「戦争の理論について」 - 軍事学のあり方やその方法論を論じる
- 第3編「戦略一般について」 - 戦略を定義し、従来の時間・空間・戦力の戦闘の基本的な三要素だけではなく、精神的要素を考察の対象として分析する
- 第4編「戦闘」 - 戦闘の一般的性質や勝敗の決定について物質的側面と精神的側面から分析する
- 第5編「戦闘力」 - 戦闘力の構成や環境との一般的関係を論じる
- 第6編「防御」 - 防御の戦術的性格や種類、戦略的な位置づけを論じる
- 第7編「攻撃」 - 攻撃の戦術的性格、勝利の極限点を論じる
- 第8編「作戦計画」- 理論の戦争と現実の戦争の関係を述べた上で、戦争計画の要点を論じる
私は書いてある内容全てを理解することはできなかったですが、1ページずつゆっくり読むだけでも論理展開などとても勉強になりました。
また、時間あるときにゆっくり読んでみたいと思います。